⑮ 産後うつ治療編(入院1ケ月目)

「母親ならみんな一人で育児してる。出来ない私は母親失格。」という罪悪感。

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こんにちは、ミィです。私は第一子を出産後に、産後うつになり、産後3カ月から精神科に入院しました。3カ月間の入院生活を経て、産後9カ月に寛解しています。

インターネットで産後うつの方と話させていただく中で、よく耳にする言葉があります。それは、「罪悪感を感じてしまいます。」今回は、うつに特有の思考パターン、「罪悪感」について書いていきます。

 

「母親ならみんな一人で育児してるのに」という罪悪感

うつ病になると、「すべて自分が悪い」と自分のことを責めてしまいます。

「罪悪感」または「自責の念」が、いつも頭の中にある状態です。

たとえば、私が感じていた罪悪感はこういうものでした。

・母親ならみんな一人で育児しているし、育児なんて出来て当たり前のことなんだ。出来ていない自分は育児が苦手なダメな母親だ。
・子どもが可愛いと思えない自分は母親失格だ。

背景には、産後1ケ月頃、①夫に「母親ならみんなやってることだ。覚悟がない。」と言われたこと、②
メンタルクリニックで、精神科医から「あなたは育児が苦手」と言われたこと
があります。

うつ病のときは、ノーマルな精神状態なら軽く聞き流せるような言葉でも、心に重く突き刺さり、深い傷になってしまうことがあります。そして、自分を責めてしまいます。

私は、うつ病になったこと、一人で育児ができなかったこと、入院している間育児ができていないことまで、すべて自分が悪いと思っていました。普通の人ならうつ病にもならず、育児もこなせるのに、と。

私が入院中に記録していた「闘病日記」には、正直な気持ちが綴られています。

育児を楽しめる母になりたかった。みんなが普通にやれていることが出来ない自分が分からない。義母に「赤ちゃんを抱っこしていると癒されるでしょ?守りたくなるでしょ?」と言われてもピンと来なくて辛かった。なぜ私は子どもがかわいくないんだろう。なぜ二人になるのがこわいんだろう。

 

私が子どもを産んだことが間違いだったのか?うつ病だから育児ができないのか?育児が苦手だからうつ病になったのか?結局、私という人間がいない方が全てがうまく回る気がする。

 

どうして私なんか産まれて来たんだろう。死にたくても死ねない。どうして私なんかいるんだろう。なんで私の手で育てられないんだろう。普通の人が出来ていることがなぜ出来ないのか。

主治医が取り除いた罪悪感

主治医の向井先生にはこの気持ちをお話しました。

入院4日目、夫二人で診察室に入り、私は「育児なんてみんなやってることだし、出来て当たり前なのに。」と言いました。

向井先生は、その言葉を否定しました。

「育児が出来て当たり前のことだなんて思わない。昔、妻が不在のときに赤ちゃんの面倒を見たことがあるけど、1日中泣かれちゃって、二度とごめんだと思ったよ。育児っていうのは本当に大変なこと。おばあちゃんたちはみんな忘れちゃってるだけで、当時は子どもが可愛いなんて思えなかったはずだよ。」

私の中では、「普通の人ならみんな育児してる=出来ない自分はダメだ」という方程式が疑う余地のないものになっていました。向井先生の言葉はそれを覆すものでした。

さらに、向井先生はこう言いました。

「今の人たちは『母子ともに健康』が当たり前だと思ってるけど、戦前はすごい数の妊婦が出産で死んでたんだよ。それを忘れちゃいけない。」(100年前の日本では年間約6000人の妊産婦が死亡しています。)

私は「育児が苦手だからうつ病なった」と思っていたのですが、向井先生は「出産は命がけだから、出産のせいで病気になってもおかしくない」と言ったのですね。

入院4日目では、向井先生の言ってることは、その場では理解できたような気がしても、自分の中でうまく消化できず、自責の念はぬぐい去ることができませんでした。

入院中は一週間おきに診察がありましたが、そのたびに私は「育児ができない罪悪感」の気持ちを吐露し続け、向井先生は同じ言葉を根気強く繰り返してくれました。

「育児は本当に大変なことだから、人の力を借りてやればいいんだよ。母親の心が安定していることが一番!」

向井先生のおかげで、徐々に罪悪感が薄れ、考え方はこのように変わって行きました。

・育児は本当に大変なことだから、一人で出来るものではない。人の手を借りるべきだ。(退院後は、保育園を利用しています。)

・私は育児が苦手なのではなく、うつ病だから出来ないだけだ。

・私は育児が苦手だからうつ病になったのではなく、出産(難産、ホルモンバランスの変化)のせいでうつ病になったんだ。

・子どもが可愛く思えないのは、うつ病だからだ。
私、何も悪くない!

罪悪感はいつか必ず時間が解決してくれる。

このように思えるまでには2カ月ほどかかりました。

夫・いっくんにも同じ話を繰り返しました。

「私は育児が苦手だからうつ病になったんだから、退院後に育児をしたらまたうつ病になるに違いない。」と落ち込み、いっくんに「出産で疲れてうつ病になっただけだよ。」と言われ、納得したにも関わらず、一週間後には「私は育児が苦手なんだ。」に戻っている・・・その繰り返し。

いっくんも「また前に戻ってる!何度言ったら分かるの?」と飽きれていました。

うつ病のときは、思考力が低下し、発想の転換が出来ず、同じ考えにこだわってしまったのだと思います。

それでも、うつ病が良くなるにつれ、罪悪感も薄れていきました。

産後うつの方は、罪悪感を子どもに関することに感じるようです。たとえば、、、

・未熟児で産んでしまって申し訳ない

・子どもが欲しいと思ってなかったのに、産んでしまって申し訳ない

など。人によって罪悪感を感じる部分が違います。「後悔」のような形で現れることもあるようです。

罪悪感を取りはらうのは簡単ではありません。専門家による治療が、最も大事です。

うつ病患者の心に寄り添って、罪悪感を取り除いていく作業は、素人には難しいですから。私の場合は、入院した病院の主治医の向井先生が、私の心を救ってくれました。

自分に合った先生を見つけ、信じて着いていくこと。いつか必ず時間が解決してくれます。

 

⇒ つぎの記事 うつの不安との戦い方。一歩一歩ゆっくり前進、今のことだけ考える。 

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