⑫ 産後うつ病の症状

産後うつの思考プロセス

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こんにちは、ミィです。私は、第一子を出産後に重い産後うつを患いました。

不眠、頭痛と倦怠感、焦燥感、不安感、聴覚過敏、文字が読めなくなるなどの脳の機能の低下、そして我が子が怖くて二人になることも出来ない・・・実にさまざまな症状が現れ、最後は希死念慮(死にたい気持ち)まで経験しました。

うつは、これらの症状が襲いかかるだけではありません。

最も恐ろしいのは「うつ特有の思考プロセス」ではないかと、私は考えています。

今回は、うつの思考プロセスについて、私の経験をもとに説明してみたいと思います。

 

産後うつのときの思考プロセス図


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私の頭の中は上の図のように、ぐるぐると悲観的な考えが回っていました。

①息子が怖いので二人でいられない。(産後うつの症状、我が子恐怖症)↓

②自分はみんなに迷惑をかける異常な母親だと思う。

③まだ育児に慣れていないだけだと思って頑張ろうとする。

④おかしい。(不安、そわそわ、音がうるさい、テレビが見れない、眠れない・・・など)頑張れない。

⑤産後うつかも?

⑥自分がうつ病になるわけない。産後の疲れのせいだと思う。

⑦精神科に行ったら薬漬けにされて母乳もやめなきゃいけない。精神科には行けない。

⑧この症状は何をしても治るわけない。

⑨仕事はやめられても、母親はやめられない。

⑩もう死ぬしかない。この子は他の人に育ててもらった方がいい。私が考えていたことをごくごくシンプルにまとめるとこうなります。

精神科に行っても薬漬けにされるだけで治らない。八方ふさがりな生き地獄にもう耐えられない。母親やめるためには死ぬしかない。この子は他の人に育ててもらった方が幸せだから、私が死ねば全てが丸く収まる。

 

ネガティブでカオスなぐるぐる思考

この思考はノーマルな精神状態だったら、笑えるほど意味不明だと思います。

でも、当時の私にとっては、真剣に自分が助かる道を探して必死にもがいた結果、この考えに行き着いたんです。

リアルタイムの頭の中は、もっと混乱していてカオス状態で、考えが全くまとまらないのに、止まることなく、ぐるぐると同じようなことを考え続けているようでした。

今なら、この考えのすべてがおかしいことが分かりますよ。

冷静に考えてみると分かりますよね?念のため訂正しておこう。

①息子と二人でいられないのは我が子恐怖症のせいだから、うつが治れば治る。

②家族に迷惑をかけているのはうつのせいだから、うつが治れば迷惑をかけなくて済む。

③育児に慣れていないのではなく、病気だから育児ができないだけ。

④おかしいのは病気だから、治療すれば治るもの。

⑤産後うつかもじゃなくて産後うつ。

⑥産後の疲れじゃなくてうつ。

⑦精神科に行っても薬漬けにはされないし、カウンセリングだけの場合もあるし、母乳も続けられる。

⑧うつは治療すれば治る。

⑨母親はやめられないけど、母親業を休むことは出来る。病気なら休むべき。

⑩死ぬ必要は全くない。なぜなら治療してうつを治せばちゃんと育児が出来るようになるから。

自分が死ぬことが最も合理的だと思ってた

でもね、当時はそんな冷静な判断は全くできなかったんです。

産後3カ月まで、私は大ちゃん(息子)が怖くてたまらず、二人きりになることができませんでした。

最初の1ヶ月は夫が休みを取って一緒にいてくれていたものの、その後は母が田舎から2時間かけてアパートに通ってくれ、産後2ヶ月から1ヶ月間は里帰りをして母がずっと一緒にいてくれていました。

ですが、サポートしてくれていた母が「これ以上やったら死んでしまう。このままでは共倒れになる!」と言うほど、疲労困憊になってしまいました。

私は自分のせいで、実家を巻き込んで迷惑をかけていることに深い自責の念を抱いていたので、「私が死ねば、大ちゃんのことは夫が義理実家で育てるだろうから、両親に迷惑をかけなくて済む。」と思いました。

大ちゃんと二人でいられないことは、産後うつの症状とは思ってもみず、自分のような母親に育てられるよりは、別の人に育ててもらった方がずっと幸せになれるだろう。」とも思いました。死ねばこの苦しみからも、育児からも逃げられる。誰にも迷惑をかけなくて済む。むしろ、助かるには死ぬしかない。

どう考えてみても、「自分が死ぬこと」それが最も合理的な選択だと、考えていました。

ぐるぐる思考はうつ病あるある!

この悲観的なぐるぐる思考は、産後うつに限らずうつ病特有のもののようです。

「うつ病をなおす」(野村総一郎著)に書かれていることによりますと…

悲観的で後ろ向き、悪い事態のみが視野に入る。うつ病者にとっては世界は何の希望もなく、自分には何の自信もない。まことに暗澹たる考えのみ、頭の中をぐるぐる回る。

野村先生が例として挙げている例が共感しすぎて辛くなります。仕事が原因でうつになった場合でも、同じようにぐるぐると悲観的なことを考えてしまうんですね…。


ぐるぐる思考

私も、いつも「どうしよう、どうしよう」と焦ってました。すごく分かる。

野村先生の指摘するポイント。・柔軟性がなく発想の転換ができない。
・「こんなに苦しい状況から逃れるのには死ぬしかない。」と短絡的に考える。
・色々手を打つ前に一気に自殺に行ってしまう「極端から極端に行ってしまう」

たしかに、私の頭の中は発想の転換というものがまるでありませんでした。

「産後うつかもしれないから精神科を受診してみようか」という発想が全くなかったし、(精神科は怖いという偏見のせいもありました。)、子どもを保育園に預けて母親業を休もうとは1mmも思いつきませんでしたね。

自分が死ぬ以外の選択肢がまったく頭に浮かばなかったとも言いましょう。

 

うつの思考プロセスの問題点

この思考プロセスの何が問題か?と言いますと、第一に自殺のリスクですよね。

「死ぬ気になれば何でもできる。」と考えられるのは、ノーマルな精神状態の人。「死ぬしか方法がない。」と考えてしまうのが、うつの人。

どうしようもない八方ふさがりだと思ってしまってるので、産後うつの場合は、自殺だけではなく「我が子を道連れにして死のう」と母子心中を図ることもありえます。

第二に、ネガティヴな思考回路のせいで、家族や行政からのアドバイスを拒否して、サポートが受けられなくなってしまうことです。

たとえば、私は夫、父、市の保健師さんから「病院に行ったら」とやんわりと勧められていましたが、そのアドバイスに対して「出来ない」と答えました。

「病院に行ったら良くなるよ」という的確なアドバスよりも、「精神科に行ってもダメだ」というアドバイスを信じてしまっていたからです。

私は母から「精神科の薬は怖い」などと言われ続け、そんな言葉を鵜呑みにしてしまっていました。それは、うつのときはポジティブな情報よりもネガティブな情報を信じやすくなるからだと思っています。

結果的に、何を提案されても「出来ない」と言うばかりなので、「ワガママだ」と見られてしまいました。

これはうつ病の人が治療に結びつかない原因のひとつになっていると思います。

サポートする側の方へお伝えしたいことは、一見どんなアドバスを受け入れないように見えても、それは「何をやってもダメだ」という「うつ的思考」のせいでそう見えるだけだということです。

ただでさえ悲観的な思考プロセスでいるところに、ネガティブな情報を与えるのは絶対にダメです。安心させてから病院に行くように導くのが一番いいと思います。難しいことですが。

いずれにしても、うつの思考プロセスは素人の手には負えません。精神科医に診てもらった方がいいと思います。

最後に。

今うつで苦しんでいる方は毎日同じような悲観的な考えをぐるぐる考えている最中かもれません。

私も産後すぐからおかしくなり、産後6か月までの半年間、ずーっとそうでした。でも、その考えはうつのせいでした。今は「あれは全部うつがそうさせていたんだ」と冷静に振り返ることが出来ています。

深い闇に落ちたみたいに悩み苦しんだ時間はとても長かったですが、晴れるときが来ました。「治ってる人もいるんだ」という希望を持っていただければ嬉しく思います。

 

 

書籍化されました!!

ミィの産後うつブログが本になりました。
ブログに書いた産後うつ体験記や、精神科医のアドバイス、産後うつチェックリストが載っています。