⑬ 気付かれない産後うつ編

家族が産後うつのSOSに気付かない5つの理由

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こんにちは、ミィです。私は、重い産後うつを患い、ついには希死念慮(死ななければならないと思ってしまう)まで体験しました。

 

産後うつの症状

私の産後うつの症状をまとめると以下の8つです。(それぞれクリックすると詳細ページへ)

  1. 聴覚過敏
  2. 認知機能低下
  3. 不眠
  4. 気分転換ができない
  5. 頭痛と倦怠感
  6. 我が子が怖い
  7. 不安感と焦燥感
  8. 希死念慮(きしねんりょ)

箇条書きでサラっと書くと何のことやら分かりませんね。もう少し分かりやすく書くと…

音がうるさく聞こえて、音楽を聴いてもイライラする、テレビもうるさい、我が子の泣き声が断末魔の絶叫に聞える。脳みそが使い物にならなくなり、料理や洗濯などの簡単な家事も段取りが分からない。気分転換しようにも、音楽もテレビも雑誌も見れないし、買い物も何も出来ない。常に体はだるく、頭が締め付けられるように重い。疲れを取るために眠りたいが、ソワソワしてしまっていてもたってもいられず、布団の中でじっとしていることすら苦痛だ。我が子が恐ろしく近寄るだけでぞっとする。得体のしれない凄まじい不安感で気が狂いそう。生きてることが苦しくてたまらない。死ぬしかない。死ななければならない。

私の顔からは表情がなくなり、どんなに苦しくても涙は一滴も出ませんでした。まるで能面のような顔。笑っていても、目は無表情でした。

 

家族はSOSに気付かなかった


「自分はおかしい、何とかしてこの苦しみから助かりたい」と思い、家族に必死に訴えました。

 

1.初期(産後1ケ月頃)の訴え

産後1ケ月頃は、夫に「赤ちゃんと二人きりになるのが怖い。育児が出来ない。」と訴えました。

夫は「ちゃんと普通に出来ているよ。」と、私を励まそうとして、訴えの裏にある深刻さには気付きませんでした。

この頃は、産後うつの初期症状として、眠れない、ソワソワしてじっと座っていることができない、我が子が怖くてふたりきりになれない、考えがまとまらないなどがあったのに、自分の状況をうまく説明できなかったのです。

今思えば、うつの典型的な症状だったのですが、知識が全くなかったので、

「産後の母親は眠れないもの」
「産後だから疲れているだけ」
「育児に慣れていないだけ」

と思い込んでいました。

 

2.産後2~3カ月頃の訴え

産後2~3カ月になると、初期症状に加えて、頭痛、凄まじい不安感に襲われるようになりました。

ここで、私は家族に体の症状を訴えるようになりました。

夫には「テレビが見れない。頭が信じられないくらいに重い。」と何度も訴えました。

が、夫は「テレビなんて見れなくたっていいじゃない。しっかり休んで。」と言われてしまい、「そういうことじゃないのに!」と、能天気な態度にひどく失望したことを覚えています。

母には「産後は目がおかしくなるし、眠れないから頭が重くなるんだよ。4ヶ月になれば良くなる。」と言われてしまいました。

3.「死にたい」の訴え

次第に、希死念慮が強まっていき、家族に「死にたい」と訴えるようになりました。脳が働かず、「死にたい」という言葉しか出て来なかったのです。そのときの会話がこちら。

私「死にたい。」
母「私も産後は死にたかったよ。娘に死にたいなんて言われると、こっちが死にたくなるからもう言わないで。」

私「死んだ方が楽だ。本当に死にたい。」
父「そんなこと言ったら、お父さんだって死んだ方が楽だよ!」

私「死にたい。自殺するから手伝ってくれない?」
夫「切腹したら介錯ぐらいしてやるよ。」

両親には怒られ、いっくんには冗談だと一蹴され、誰も本気にしてくれませんでした。

家族に「死にたい」と訴えても、心配してもらえず、迷惑がられていると感じました。

ますます「人に迷惑をかけることしかできない自分は、やっぱり死ななきゃダメだ」と思うようになってしまいました。

産後うつに気付かず悪化させてしまう理由

本題はここから!

一体なんで誰も事の深刻さに気付かず、産後うつは悪化してしまったのでしょう。理由は大きく5つあります。

1.産後うつの知識がない

「産後だから一時的に情緒不安定になっているのだろう。周りが家事育児を手伝って、しっかりと休んで気分転換でもすれば自然と回復するだろう。」→×間違い

「産後うつは病気。精神科治療が必要」→○正解

私のような重いうつになってしまった場合には、しっかりと精神科医に診てもらうことが最も必要なことだったのに、それをしなかったことが産後うつ悪化の最大の要因です。

環境を変えて(周りのサポートや実家に帰る)待ってるだけでは、何の問題の解決にもならないのに、環境ばかり変えようとしていました。
 

早く適切な治療ができなかったことが悔やまれます。

 

2.産後うつ当事者の訴え方の問題

「赤ちゃんと二人でいるのが怖い」「育児ができない」という訴えは、育児に自信がないだけのように映ったようです。

つまり、産後うつは病気なのに、その訴えは育児不安と同じに見えるので、家族は「育児が苦手なんだな」と思ってしまったということです。

私は、自分が母親としてダメだから育児が出来ないのだと思っていましたので、

自分が悪い、人に心配かけたくない、家族に幻滅されたくないと思って、強く訴えられず、一生懸命普通に見えるように振舞っていました。

 

今思えば、一番最初に書いたような症状を、ありのままに訴えていればよかったものを、脳がうまく働かず、言葉がまとまらなかったせいもあって、きちんと説明できませんでした。

精神の病気は目に見えないので一見すると普通にしか見えず、普通に振舞おうと努力さえするし、育児不安のような訴えばかりするのでは、家族も深刻さに気付くのは難しかったと思います。

 

3.みんな赤ちゃんのお世話で精一杯

人間の赤ちゃんは、とにかく手がかかります。大人の事情など待ったなしで、24時間泣きわめく怪獣のようなものです。

赤ちゃんのお世話だけでも精一杯で、家族みんなそちらに気を取られてしまって、母親の精神的な問題にまでは手が回らないのが現実。

赤ちゃんのお世話は、絶対に誰かがやらなくてはいけないので、目下のところの緊急課題に誰もが集中してしまい、
「いい大人なんだから自分のことは自分でしなさい」と思っても仕方ありません。

夫は、赤ちゃんの世話は熱心にしてくれたのですが、私のお世話は親がするだろうと思っていた様子。話をじっくり聞いている時間もありませんでした。

育児に時間、気力、体力を取られているときに、母親の体調の異変に気付くのは容易なことではなく、産後うつが見過ごされる大きな要因になっていると思います。

4.人が信じられない

私は夫に自分の症状を一生懸命訴えていたつもりですが、話を聞き流されていると感じました。

思い出してみると、毎日のように電話をしてくれ、平日に激務をこなしながら、休日に2時間かけて実家のある田舎まで通ってくれ、夜中の授乳を全部やってくれていたのに。

それでも、夫への不信感があり、大好きだった夫のことが嫌になってしまっていました。

夫だけではなく、父のことも、何も分かっていないと思っていました。

 

「周りは全部敵!誰も助けてくれない!」

そう思って、人が信じられなくなっていた気がします。

 
今思えば、これもうつの症状のひとつだったのでしょう。
 
うつになって、人への不信感が増し、精神的に自分の殻に引きこもるようになってしまった。
 
そのせいで、家族に自分の症状を強く訴えられず、強く助けを求めることができなかったことも、大きな問題でした。


5.精神の病気への偏見

母のことは、唯一の理解者のように思っていたのですが、その母は「精神科の薬は絶対飲むな!」という間違えた考えを持っていたんですね。

ただでさえ不安でいっぱいなのに、「精神科=怖いところ」のようなイメージが植えつけられてしまいました。
母のせいだけでなく、自分が「うつになるはずない」と認めなかったせいもありますが。

夫や父は「病院に行ったら」と何度か勧めていましたが、私は精神科に行くことが恐ろしく、「何をやってもダメだから死ぬしかない」と極端なネガティブ思考になってしまい、病院に行く決断が出来ずに嫌がりました。

夫や父は、まさかいい大人が自分で病院に行く判断すら出来ないとは思っていなかったようです。当たり前ですが。

(でも、これができなくなってしまうんだなぁ…)
精神の病気は、体の病気とそう変わらないもの。それなのに、精神科のお薬にものすごく偏見を持ってる方がいますね。この偏見がうつの治療の敷居をあげてしまっていると思います。
薬を飲まないリスクよりは、飲むリスクの方が小さいと思うのですが…。(冷静に考えれば、死ぬくらいなら薬を飲んだ方がマシですし。)
まずは、お薬云々の前に、おかしいと感じたらメンタルクリニックを受診することをオススメします。漢方やカウンセリングだけで済む場合もあるそうです。

 

まとめ

どうしたらもっと早く産後うつに気付いて、早めに対処できたのでしょう?

私の失敗例とすべて逆のことをしていただければと思います。

大事なことは、家族だけで問題を抱え込まないことです。

市の保健師に相談したり、精神科医に相談すること。自己判断はしないで、素直に言うことを聞くことが大事。

赤ちゃんのお世話については、児童養護施設に入所するとか、何かしらの公的援助が使えると思います。

お母さんが「死にたい」と言い出したら、本気にしてください。話をよーく聞いてみてください。

子どもを産んだばかりのお母さんが冗談で「死にたい」なんて言うはずないですから。

「死にたい」と、何度も繰り返し言うようになったら、うつが悪化している可能性があります。

そうなると自分で事態を解決する力がなくなっているので、周りの家族が病院に連れて行ってあげてほしいと思います。

 

⇒ つぎの記事  育児が修業なら、産後うつは拷問。産後うつに気付いて!

 

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ミィの産後うつブログが本になりました。
ブログに書いた産後うつ体験記や、精神科医のアドバイス、産後うつチェックリストが載っています。